空中ブランコ/銀猫
誰も気付いていない
扁平な空と屋根の間に
ブランコがある
そこには
飛行機で行けないが
羽根をばたつかせても
到底届く高さではなく
梅雨にぬかるんだ地表と
レーダーに映る雨雲の間にあって
透明に近く色を失ったり
光線を含みすぎて、
安い鏡のように歪んだりもする
小鳥の囀りとか
天使の寓話とか
もはやそんな化粧はせず
ただ
憂鬱の鬱、と言う文字を
きちんと覚えている人が
思いのほか大勢いるように
そこ此処に
ごく普通の風情で
ぷらん、と宙にぶら下がっているのだ
いったい何のためにあるのか
そんな疑問は無粋というもの
誰もが知らぬ素振りだが
何処か
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