潮騒が撃つ/Rin.
 

身体の中で潮騒を飼っている
辞書はそれを焦燥や憂鬱や歓喜などというが
潮騒はそんなにもシュハリ、と
姿を変えるものだろうか。

生まれて初めての始発に乗った。
どうしてだろうかとは考えようとしない。
吊り広告の文字が
曖昧に耐えられない朝の視界に否応なしに入ってくる。
乗客はふたりだった。もちろん
私は彼を知らない。
ゆうべの夢を思い出した。始発は
夏を目指していた。
潮騒が、また――ああ、肋骨の中がこそばい
ここは空洞ではなかっただろうか。
空洞ではなかっただろうか。
車両に抜け殻の、笑い声が充満する。
私は海に行きたかった。

身体の中で潮騒を飼ってい
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