蜃気楼の街/服部 剛
旅先の友を訪ねた
帰りの列車のシートを倒し
ポケットに忍ばせた
ウイスキーの小瓶を一口
喉が焼ける一瞬、
の後に
聞こえて来るのは
我胸に とくん とくん と響く
孤独の音
頬は赤らみ
車窓の外の山々を
埋め尽くして立ち並ぶ
緑の木々に
人の顔々が
浮かび上がる
いくつものトンネルの闇を抜けて
山間(やまあい)を流れる川と同じ方角へ
列車は都会へと走る
( 一輪の薔薇に逢いにゆこう
( 一方通行の線路の上を僕は
( 行方知らずに疾走して
遥か昔に山々を
遠く離れた木々達は
人間達へと化身して
今日も見つからぬ 愛 を探し
「 都会の森 」を彷徨う
遠くに立ち並ぶにビル群に向かって
山間を緩やかに伸びる線路の先は、
突き刺さる。
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