浜辺の樹木/服部 剛
 
つマスターの詩友に 
( これ、買うよ )と手渡す 

レジを打ったマスターから 
手渡された「 出会うため 」は
数年前に終の棲家の鎌倉で 
密かに世を去った老詩人の 
遺言書の重さに 
もう一つの記憶が甦る 

某ローカルFMで 
詩の番組をやっていた頃 
老詩人のその人から 
若い僕に一通のメールがあり 
ささやかな声援を贈ってくれた 

紅葉する秋の老樹が描かれた 
「 出会うため 」の表紙を開くと 

老詩人は浜辺に独り
樹木の面影で
立っていた 

老遠い水平線の彼方に 
いつまでも 

目を細めて 







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