犬/生田
負け犬の夢を見ていた。そいつは私で、私はそいつだった。惨めな悪感情が私のうちに渦巻いていた。自己を対象化しきれずに、半端な逃げ道を見出したのだろう。それにしても、まだ覚めないのか、私は。
犬は惨めな生き物だ、と友人が吐き捨てた。その隣で、私は擦り寄ってきた野良犬を蹴り飛ばした。友人は何より、惨めな者や惰弱なものを嫌悪していた。それを知っていた私は、いつも強くあるように気を張り、また、強さを装っていた。そのときも、私はポケットにいれた手、小さな菓子袋を握った手をそのままに、無言と無表情とで繕った嫌悪感をもって、逃げていく犬を見ていた。そんな自分をなんとも思わなかった私は、そのときとうに病ん
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