夢なら誠/こんぺき13ごう
 
一滴、こぼれて/少女であったこと/一滴、こぼれて

かつてわたしが少女であったころ

セーラー服のリボンを結ぶときに
いつも
一滴ずつしたたってた
結ぶたび気づかぬうちに

青いわたしの体からしたたる、少女よ



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そっと、夜を呼吸する
静寂に融けた幸せの影
夢の欠片を拾い集めた指先に残り香
そっと、夢想する

嬰児(みどりご)のように何一つ望むこともなく生きていけたら、と



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夜を携えて、幻想はわたしの肺に落ち着いた
開け放たれたままの窓から染み入る硬質な気配
ふと吸いこんだ酸素が肺のなかで幻想ととけあい、
あの男と触れ合うときの冷たさと似ている、と思った

それ以上でも、それ以下でもない

感傷の融点



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自らの手で書かれた言葉を眺め、いつも思う

そこに わたし はいない




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