紺の空、風の強い日は/
衿野果歩
強い風が吹いて
あの人の紺の傘を打つ
骨の折れた傘の下で
あの人は片目を抑えている
コンタクトがずれるらしい
風の強い日は
視力を補って泣きそうになるなんて
馬鹿みたい
……なんて思わない
赤い瞳が潤んでいて
あんまり愛しくて笑ってしまう
あの人は必死に
瞬きを繰り返す
そのうちの何回かに
私の姿が映りこんでいる
(はず)
ただ目の前に居られることが
うれしくて
私まで泣きそうになる
風の強い日は
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