ショートショート/花びらと仔犬/いすず
 

家から持ってきて、花びらに処理をしました。
仔犬はふしぎそうに、でも、ぱたぱたとしっぽをふって、興味深げに見ていました。

僕はいつものところに、お花を敷き詰めて仔犬を呼びました。
このお花は枯れないからね、ずっと咲いてるよ。
ありがとう、と仔犬が言いました。
花びらをあげようね。
僕が花びらを掛けながらそういうと、仔犬が目をとじてこたえました。
花びらいっぱいちょうだい。

僕にはしてあげられることはそれくらいしかありませんでした。

仔犬は目を閉じて、すやすやと寝入りました。
その苦しみのない顔を見ていると、僕はかなしみで胸がつぶれそうなのでした。

花びらいっぱいちょうだい。
無邪気にいった仔犬のよこがおがうかんではきえました。
その願いをきいてしまったら、二度と会えなくなるかも。
それでも、それをきかずにはいられませんでした。

僕は手を伸ばせば届きそうなところで眠り始めた仔犬に、いちども触れることもないまま、そこを去りました。

仔犬は今日もお花の中で眠っています。    〜Fin〜

by YUE  
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