誕生の日 /
服部 剛
もし過去というものに
遡(さかのぼ)れるなら
初めて母の胎を出た
あの誕生の日に還ろう
まぶねに寝かされた
幼子のまんま
理由も無く
天に向かって泣き叫ぼう
大人になったふりをする今も
あの日の幼子は
私の内側に無防備にも
裸を晒(さら)している
( 一体何を惑うことがあろう・・・ )
誕生の日から終わりの日まで
すべてを委(ゆだ)ねた私の命は
何者かの透きとおった両手に
ずっと包まれていた
世界の何処にも無い
たった一つの
宝のように
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