感動について/パンの愛人
われわれにとって感動が重要であるのは、それが日々のルーティーンで鈍磨したわれわれの認識や感覚をふたたび新鮮なものにしてくれるからである。これはとりもなおさず、感動とは非日常的な行為であって、われわれの生活が情念だけで成り立つことはできないことを意味している。しかしだからといって、感動と無縁な生活というものを、われわれが受け入れることができるかどうかは疑問である。
言うまでもなく、ひとくちに感動といっても、高級なものもあれば低級なものもある。深い影響を与えるものも、浅い印象に終わるものもある。なにからどのような感動を受けるかは、年齢や経験、教養の差によって異なり、その相違はなにも個々人の間
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