20万年目の浮気/辻野克己
 
ハエの手のこする音が聞こえるぐらい静かな夜だった
ぼくらは見つめあっていた
なにもごまかしようのない
左右がふとそろってしまった鏡のようなぼくらだった
まばたきの一回で世界が変わってしまいそうで
いやしかし確実にぼくらは一回のまばたきで変わっていくのだろう
一本の髪の毛で変わってしまうシーソーだから
涙なんかとても正気じゃない重さをもっているはずだ
とてもおさないはずなのに
ぼくらはこの畳にすわって
どこかべつの星に移住しようかどうかとなやんでいる

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