田村隆一「人が星になるまで」を読んで 〜在りし日の詩人からの語りかけ〜 /服部 剛
 
る 
   というのは錯覚さ 

   地平線を何度も越えてきた人間の足は 
   時間よりもはるかに速い 

      〜中略〜 

   人 木 小動物 野鳥さえ 
   月光に透視されて 

   人間は影という実体になる 


 この「老人」は他ならぬ老年に入った頃の田村隆一自
身でもあると思います。長年人生の旅を続けた詩人の肉
眼に映るのは人や物事の「上辺」ではなく全ての存在の
背後に在る深い影なのでしょう。 


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   人間が人間そのものになるとき 
   大きな木は語りだし 
   渓流はしずかに
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