灯台守のポートレイト/りゅうのあくび
嵐が去ったあとの
うっとりとした
天気雨がふる夜に
穏やかな波が渚に
はじけていて
潮のよせる音が
白い灯台の中でも
吐息のように響いている
塔のてっぺんの方へと
約束をした部屋を目指して
背負ったキャビンの油彩画には
鏡の前にある浴槽に
横たわっている
裸身になった恋人が
描かれていて
背中に載せながら
ゆっくりと運んでゆく
途中で恋人が描かれた
未完成のポートレイトがぬれて
しまわないように
差していた紺色の傘を
閉じては巻きなおし
左手には
画材を抱えて
翼の傷ついた天使が
舞い降りたときの
輪のような
宙へと浮か
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