小詩集 別の国/嘉村奈緒
も邪魔されずに孤独な俺だぜ
側に熊がいるけど孤独だぜ
とてもとても愛してた
もう帰れないんだ
粘着的な空気に身を寄せるんだ
傷ついてるし
孤独だし
熊が蜂の巣をぶち壊しはじめてるけど
おかまいなしだぜ
高らかに孤独だぜ
俺は今孤独だぜ
*
なだらかな人だった
ふうわりとした腰にはいつも春が絡まって
子供が悪戯に突付く度に
人は少しずつ死んでいくのだった
*
くるみを割った音が
近いところから少しずつ遠いところまで
響き
いつか、群れからはぐれた水鳥に届くまで
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