小詩集 別の国/嘉村奈緒
 
長い時間、丁寧に水切りをされた子どもたちを
洗濯ロープに干していく
きゃらきゃらと子どもたちが笑うので
ちょっとした火花が続いた
子どもたちから出たお汁は
大切に集められて牛舎へ持っていく
糧に混ぜるといい乳が出るんだと
もうこの地域では遠い年月をそう過ごしている





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いつだって
森を燃やすこともできたし
森を増やすこともできた
何度だって
腐葉土をわけあたえることだって
たくさんの銀杏と
麦の穂を交換して
今日は薄く焼いたものを食べましょうねと
暖かい食卓を作ることだって





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