神と疑似餌/かいぶつ
 
らリールを巻いてゆく
だがここまでの大物となると小手先の技術では到底、敵わない
どんどん糸は引き抜かれてゆく、いけない!
このままでは木の枝や岩に潜り込まれ、釣り糸を断ち切られてしまう!
僕は指輪だけ奪われてしまうことを回避しようと
水際を左右に忙しく駆け回った
一時間の格闘の末、神様も力尽きたのか
確実に僕の足元へと近づき、その全貌を露にし始めている
そして神様の鱗と呼ばれる羽衣が見えたとき
僕は腰に提げていた捕獲網で頭の輪っかから
救い上げることに成功したのであった
飛沫を跳ね上げながら朗々と
聖書を読み上げる女神を目の当たりにしたとき
その想像を超えた、声と姿の美し
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