神と疑似餌/かいぶつ
 
匂い、水の音や湖面の輝き
そしてここに集まる人々
普段、何を生業として暮らしているのか見当もつかぬが
僕と同じようにこの場所が好きであることが
ひしと伝わるおじさん方だ
それらに囲まれていると小学生の頃からここに通う僕は
今だ夏休みに呆けているような気分に浸り
骨の髄まで無防備な道楽者になってしまう

僕は今日も早朝からここで釣り糸を垂らし
神様が喰らいつくのを待っている
周りには悪魔を専門に釣る人もいるが
そんなのは邪道だ 流行に流された不良少年の遊び
しかしもう昼過ぎだというのに
今だ1輪も釣ることが出来ないままでいた
神様は比較的水温が低く、涼しい時間帯に

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