飲食店の席で/ブライアン
ていないんだ、と友人は言う。友人は走り出すほどのスピードで、目的地から離れていく。
午後六時、予約した店に一人で待つ友人は、手持ち無沙汰にビールを飲み始める。最近ずっと、待つことについて考えている。中学時代の教科書で読んだ、詩の一節を思い出す。”あれは遠い処にあるのだけれど/おれは此処で待っていなくてはならない”。頭の中で、何度も何度も繰り返している。なぜ待たねばならないのだろう。どこかへ向かうのではなく、待つという停止した行為。決して能動的とは思えない。だが、なぜだろうか。待つ行為は、積極的な行為に思える能動的ではない、積極的行為。これは、矛盾しているのだろうか。そうでもない気がする。
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