雨が好き/相良ゆう
雨が好き
世界が濡れて
恍惚の芳香が包む
夕と夜の間に
草花と土が
なめらかな生命を与えられ
喜びの香が
艶やかに立ち昇る
火照る身体を
委ねたアスファルトの上
はしゃぎ疲れた肢体に
清めの香水がそそぐ
静かな宵に
雨の匂いが好き
草の匂い
土の匂い
アスファルトの匂い
雨に濡れた世界は
いつも以上に
「ここにいるよ」と
力強く叫んでいる
強くわたしを抱きしめる
天と地と人の悲涙が
世界を濡らしはじめる
夕と夜のわずかな間
開闢の使者に導かれて
転生する
あたらしい世界の
虜になる
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