フレグランスボム/影山影司
 
かなかった。そしてついに、このスプレーが出来上がったのです」
 L氏は懐からさっと鉛筆ほどのスプレーを取り出し(S氏は思わず身構えてしまった)自分の体にシュッと吹き掛けた。
 たちまち、合成的な匂いがあたりに満ち溢れた。合成的だが、嫌ではない。心地よいめまいがして、軽やかな気分だ。そして、狭くはない応接室を満たす程の匂いだが強烈過ぎもしない。窓を開けようかどうしようかと悩むほどの悪臭が、一瞬で消え失せるとは。

「これが世に広まれば、私はもう不安を感じずに済むのです」

 L氏はにやりと笑い、二人はガッチリと握手した。

 スプレーはフレグランスボム、と名付けられ発売から一年も経た
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