フレグランスボム/影山影司
 
ったように、フレグランスボムは街に国に世界中に広まった。そして煙草と同じく、フレグランスボムの危険性が分かったときには全てが手遅れだった。

 フレグランスボムのニオイに包まれたビルの一室で、S氏はL氏と初めて出会った日のことを思い出す。
 彼はフレグランスボムをS氏に説明するまで使わなかった。自らの臭いを気にして居場所を失ったL氏は耐え難い悪臭を放ち、生きていた。
 ニオイの価値観が崩壊してしまったこの世界であの悪臭を放つ男は生きているのだろうか。
 自分の体の匂いを嗅いでみたが、ニオイがなんだったかも思い出せない。
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