フレグランスボム/影山影司
 
明家の中には薄汚い浮浪者然とした格好をするものも居るが、L氏は浮浪者そのものだった。古着屋の店頭ワゴンからかき集めてきたような服装に、風呂に入っていないのか浅黒く汚れた肌。体毛は頭髪だけでなく、鼻毛や手足の毛も伸びきっているようだ。
 そして何より酷いのが体臭であった。
 差別的な表現をしても構わないのであれば、L氏は乞食の臭いがした。抽象的な例えをすれば、粉っぽく、鼻の中の受信機一つ一つをイガイガで突き刺されたような臭いだった。率直に言えば臭かった。
「おっしゃりたいことは分かります」
 大仰に手で制して、L氏は懐からスプレーを取り出した。
「私は昔から、自分の口臭が気になって仕方がな
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