空き缶と旅人 /服部 剛
 
  からからから 


バスの車内の床を
なすがままに転がる 
誰かが忘れたコーヒーの空き缶 


  かーん 


いい音立てて 
優先席の爺さんの 
杖にぴったり止まった 


  * 


地図を持たない旅人 
(探しものは何処にある?) 
ながれながされ
さすらって 
こころの器を空にして 


  かーん 


ぶつかった場所から 
彼の物語が 
幕を開ける 







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