ガラスの箱/tanu
爪よりも薄いガラスの箱に
僕は閉じこもっている
時々ガラスの表面に傷をつけては
そこから流れ出るどす黒い粘液を舐め
その苦さに顔をしかめる
これまで膨張と収縮を
繰り返してきたガラスの箱は今
収縮の一方向だけに
動き始めている
箱が収縮するたびに
息苦しさが増し
息苦しさが増すたびに
僕はガラスを激しく掻き毟る
ガラスの箱から抜け出すことは出来ない
ガラスの箱を壊すことも出来ない
ガラスの箱は
僕そのものなのだ
ガラスの箱から抜け出せば
僕は僕でなくなってしまう
ガラスの箱を壊せば
僕自身が壊れてしまう
どれほど窮屈でも
どんなに息苦しく
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