シウゾギトオ/木屋 亞万
来ておくれ
このままじゃ話がダラダラと
山場もオチもないままじゃ
指輪をどうのとか魔法をどうのとか
そんな奇天烈な展開が欲しいじゃろ
ほらおじい様が持っておられる
その竹取ソードで鬼とか竜とか
ばったばったと薙ぎ倒してきて下され
もしくは帝を呼んできて
国家権力で竜宮を壊滅させておくれ
おーほっほっほ
カメが波間に顔を覗かせ
隠れるようにチャプンと潜った
月っぽい鞠を蹴り上げたのを
合図にして大きな波が砂浜を襲う
高波のすき間から巨大な人喰いザメ
月をも喰らうだろうその大口で
高笑いする姫を飲み込んでいった
爺さんと婆さんと犬は立ち尽くす
髪や衣服は濡れて張り付いている
犬はぶるぶると体を震わせた
遠吠えする声に答えるように
本物の月が何事もなかったように
海からゆるりと昇って来た
月にはカニの刻印が押されている
砂漠は誠に砂漠らしい
普通の砂漠となっていた
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