雨の記憶/高杉芹香
何を言いたいかも図れない。
けど。
わかる。
あたしもよくやってしまう。
言いたいことは言わない・・・そんな大人の強がりだ。
言いたいことがあるとしても、
ほんの少しの、ほんのわずかな倫理観と現実感に制御されて
ことば少なに 相手の今を慮るだけのメールを飛ばす。
そう・・・きっとそんなとこ。
雨が降る景色を見て
彼があたしを思い出したのだとしたら。
あたしと彼の 最大の想い出は
やっぱり 雨の中に残ってるんだと思う。
あたしも 雨の雫を見るとき よく あなたを想い出すよ。
・・・
そんなことは伝えないまま。
『こっちも夕方から雨だそうです。お仕事がんばってね。』
そんな 大人になった2人の今が過ぎていきます。
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