「 新しい家 」/服部 剛
無表情に首を傾げた
自転車の整列する駐輪場の上
線路に吊り下がる
モノレールは監獄の面影で走る
昨日の重たい疲れを残し
眠りながら吊革にぶら下がる人々
スーツ姿の人々に紛れ
一人私服を着た彼は
二つの吊革の輪に
通した両手を束ね
瞳を閉じて
夢を見ている
アスファルトの割目から
いのちの喜びをひろげる
二枚の葉
彼の鞄には
古い家の壊れた
跡地に建つ
「新たな家」の設計図が
入っている
列車が駅で停車する
扉が開く
吐き出され吸い込まれる人々
二つの吊革に通す
両手を束ねた彼は
瞳を閉じた
銅像の姿で
夢を見る
まっさらな土地に建つ
朝日に透けた
「新たな家」の骨組
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