雨の森で/大覚アキラ
 
雨は
見えない森になって
街を侵食していく
闇の中で肉食の獣が
共食いを始める
海に向かって歩いていくと
砂浜には
打ち上げられた人魚たちが
数え切れないほど転がっていて
そのことを獣たちに告げると
ようやく共食いは収まった
獣たちは
楽しそうに人魚を食い漁り
まるで祭りのように
砂浜は血の匂いで満たされた
そのころには
見えない森によって
街はすっかり
侵食されつくしていて
砂浜が森に飲み込まれるのも
もはや時間の問題だった
帰り道は
すでに完全に失われている
雨は
止みそうにない
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