便所の花 /服部 剛
 
朗読会の司会を終えて 
塒(ねぐら)となったネットカフェの個室で 
目覚めた朝 
古びたタイルの便所に入る 

鏡の前に 
薄桃色の花柄の 
トイレットペーパーが 
置かれている 

小窓の隙間から吹く風に
千切れた紙の切れ端は 
髪のように靡(なび)いて 

中心に空洞の芯は通り 
ずっしりとした 
女のつよさよ 

手を洗い終え 
トイレのドアを開いたら 
何処からかぷうんと 
匂う 

香水の薫り 




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