埋める火の熾き/pur/cran
 
梁にしがみつく蝶を引き剥がすたび
親指と人を指す指が情けなく震える
コロシヤシナイカと懼れながら
ただ善意を偽って助けようとして
羽を掴む、その度に
燐粉が指先に着いてしまい
その後でゴシゴシと水で洗う
否、ハンドソープで洗う
燐粉がとれなくてとれなくて
なぜそんなに厭なのに助けようとしたのか
分からなくなる

子供のころに
蟻を踏み潰さないために下を向いて歩いた
なぜ他のいろいろな物を殺さない努力もしないで
蟻を潰さないことを心がけていたのか
そんなことも分からない

もう少し年を重ねてからは善行を積もうとした
一度でも悪行を犯した者に過大な責を負わせることには
欠片も触れなかった
理不尽なことも分からないまま

いまでは自分に不都合なことは
すべていらないように感じられてしまうので
多くのことを見殺しにしている
存在の意義も分からない

そして
「おお、こわいこわい」
と言ってテレビのニュースを見ている
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