N/アイバ シュウ
 
い立場においているような、つまり負けたような気がして悔しかったから、僕はいつも彼より自分が多く持っているものを探し続けていた。
 4組で何が起こったのかは分からない。しかしNが左手で廊下のドアにはめ込まれたガラスを破壊して、その血で廊下を染めながら何かを訴えたのは間違いない。
 ただ囚われているだけのこの時間から逃げ出したいためだけに、心配そうに彼を探しに教室を抜け出した数人の生徒を横目に、僕は心のなかで大きな拍手を送った。僕は彼に、完全に負けたと思った。
 もうすぐ5時間目が始まる。彼と会うことはしばらくないような気がする。
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