N/アイバ シュウ
 
 3時間目の中ごろ、隣の教室で大きな破壊恩がした。中央廊下に面している4つの教室の扉がいっせいに開いたが、窓から見える階下の教室の中には、実にまったりとした空気が流れているように見えた。
 ガラスの音とともにこの4つの教室だけが、全てから切り離されてしまったように感じた。僕は普段とは違う空気を思い切り吸い込んだ。そうしたら錆びた匂いがした。
 4組のN。中学のころから彼を知っているが、暗い瞳に無言の熱を持った、その静けさが怖いようなやつだ。僕は彼と口をきいたことはほとんどない。なんとなく近づきがたかった。もしかしたら憧れを抱いていたのかもしれない。けれど憧れるということは、彼よりも自分を低い立
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