祖母の寝息 /服部 剛
 
一週間後に脳の手術をする 
八十八の祖母の部屋に 
慰めの言葉もみつからぬまま 
顔を出そうとした 

襖(ふすま)の隙間から 
すべての恐れを一時忘れた 
安らかな寝息が聞こえた 

ぼくは足音を立てず 
廊下を引き返し 
自分の部屋に戻った 

 
戻る   Point(1)