海と黄昏/銀猫
 
響いているのは雨音
夜が深くなると
それはいつか
遠い海に似てさざめき
わたしは
波に洗われたひとつの貝を思う

ところどころが欠けた貝殻は
すこしの闇を内包しており
誕生からずっと聴いていた、
海の声を忘れ始めている

   
   青。
   砂に濁り
   ちぎれた海草が漂う
   
   砕けた貝殻が
   無数に沈んで
   戯れに足を切る
   
   はじまり、ではなく
   むしろ
   海岸線は黄昏と
   小さなむくろで満ちている


たぶん
真夏のきんいろは
幻なのだ

海水を
手に掬えば砂混じり
遠い水平線、
しずかに青



戻る   Point(19)