海と黄昏/銀猫
響いているのは雨音
夜が深くなると
それはいつか
遠い海に似てさざめき
わたしは
波に洗われたひとつの貝を思う
ところどころが欠けた貝殻は
すこしの闇を内包しており
誕生からずっと聴いていた、
海の声を忘れ始めている
青。
砂に濁り
ちぎれた海草が漂う
砕けた貝殻が
無数に沈んで
戯れに足を切る
はじまり、ではなく
むしろ
海岸線は黄昏と
小さなむくろで満ちている
たぶん
真夏のきんいろは
幻なのだ
海水を
手に掬えば砂混じり
遠い水平線、
しずかに青
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