期待外れの曇り空/chick
 
オブラート越しの太陽は、微笑むこともなく、泣くこともなく
初夏の陽気だと告げられた皐月上旬
見た目よりもぬるい朝は、パーカーを置きに帰る気力をも奪っていく

パーカーにモッズコートを重ねたゆるい後姿は
いつまでも廃れないスタイルだと
選択肢のない街角で女が笑った

選ぶものは、消去法で選ばれたもの


消去法の町を真っ赤な自転車で飛び出した
ぬるい空気はもしかすると、人口密度のせいかもしれない


いろんな人がいる
例えば消去法の島を船で出てきた、君
君はリュックがとても似合う
先週は違う人のを背負っていたのに

いろんな人がいる
君が乗って来た船が真っ赤だったら
きっと、良い友達に


期待外れの曇り空
いつの間にか太陽はオブラードと一緒に溶かされた

号泣するならもう少し待っていて
自転車に乗れなくなってしまうから
船が出せなくなってしまうから


「パーカー、鞄にしまっちゃいなよ」
君が耳元で囁いた
背中にはきっと
また違う誰かのリュックがしっくりときている



(2008年5月)
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