練習曲/A道化
指の願い
叶わず
雨垂れて落下する夕暮れに
そっと逆らい 立ち上がり
すとん と見下ろせば
窓硝子に迫りくる夕闇に もっと ひろく
もっと しとしと
見下ろされ
あ
ピアノの中
聞き取れない囁きのような・
くすくす笑いのような・からかうような
誤った旋律の 余韻
くすくす仄めかすばかりで
解らない 解らない隠れん坊をまた隠すので もう
「あなたはは白骨、と影」として
しとしと うつむく 指
それでも
願う
請う
ああ
ピアノ 叶わず
しと しと しと
ただ 縦 縦 縦 そのまま
紡ぎ合えぬわたしたちはどこまでも
どこまでも無数の縦糸だ
旋律のない
夕刻の
2008.5.9.
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