地上の楽園 /服部 剛
振り返り
坂ノ下に見える
21世紀の街は
夜の山々に囲まれた
大きな死海の幻
紫の靄がかった湖面に
瞳を開いたまま
湖面に浮く
無数の魚
( わたしはこの国を
お前に与えよう・・・ )
彼が生まれる昔から
交わされていた約束の言葉が
山々の向こうから聞こえる
やがて死の海を囲む
山々の緑は色づき
浜辺のほとりに
一輪の花は
ゆっくりと開く
日の光の煌く湖面に
時折、魚は跳ねる
丘の上で瞳を閉じる彼は
今夜も夢見ている
死の海を覆う紫の靄が拭われ
緑豊かな楽園が
この地上に現れる日を
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