バッドトリップ/風見鶏
 
意識ははっきりしていたので眠ろうとも思わなかった。だから、特にそれを狙ったわけでもないが、どうでも良い事を思い出すにはお誂えの状況だったのかもしれない。

 自分はいわゆる母子家庭という環境で育った。自分の記憶が正しければ兄の高校受験の時期だったので、たぶん小学二年生の時だったと思う。小学校の運動会の帰りの車の中だったと記憶している。両親の会話の内容はよく覚えていないが、それきり父が家に帰ってくる事は無かった。わけのわからない自分はただその出来事を無感動に受け入れた。
 成長するにつれて自分の家庭が特殊である事も離婚がどういったものであるかも理解していったし、両親の離婚の直接的な原因が父の不
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