「補食」/菊尾
残像として揺れるふたりの影が
この揺らぎを生む要因であることを感じ始めていた
奇数月に心浮く理由は
これから終わりに向かうから
ありもしない現実を思い描いていた
黄緑の鎌が花弁の上で振られる
何か捕食せずにはいられないのねと
それを見た君は落ち着きを失くし始める
遠慮することなく言ってしまうと
この先きっと言葉を失う
伝えられないままがいい
前を歩くには重すぎる足
敬遠すべき夜の浮遊
戻り方を忘れてしまいそう
泣きじゃくっているだけ
謝り方を知らない子供みたいに
感情が足元を歪ませてしまう
息がかかる距離と
群棲している海月達
貶めあいながら縺れあいながら
複雑に込み入ってしまう
ふたりはそんな風に出来ている
僕を残さず食べたらいい
その中で溶けて混ざりあえたら
やっと理解できるから
指の付け根をなぞる
青く透ける血管と冷たい手
君の余白は誰にも塗り潰せない
遠ざかる波音
柳が笑う
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