入院記/渡邉建志
ミュニケーションが億劫で、まだできていないのです。家族というのは難しいものだと思います。母なら綺麗に描くと思う。
紀尾井から四谷へ帰るときには堤の上の道を通ります。ここは絶好の猫プレイスで―2年前、Nと一緒にここを歩いていたとき、おばさんが猫に餌をやっているのを見たことがあります。たぶんそのせいでしょう―階段を駆け上がっていっても、階段に寝そべっている猫たちはびくともしないのです。あと、この道は恋人たちがベンチに座って上智のグラウンドを見下ろしています。Nと歩いたときはたしか夕方で、ベンチにいる恋人たちがなんだかとてもいい雰囲気で座っていたのを思い出します。私は今独りで歩いていて、も
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