想撮空間 「鏡の世界」/緋月 衣瑠香
 

目眩を起こし
手摺りを捜す右手
宙を荒らした左手

しゃがみこめば
目の前に広がる鏡の世界

鏡は
私をうつす
私は嘲笑っている
その異様なほどに三日月を象る口が告げる

かわいそうに。
あわれよのう。

何を言うか、と
己の化身に悲鳴をあげるが
それは笑い続ける

あわれ、あわれ。
そなたは、あわれなり。

おさまらぬ目眩と
壊れたラヂオのような『あわれ』の波

ふらつく身体を懸命に動かし鏡に手をやる
そして
私は私を破壊する

光を反射し雪の様に散り輝く私の化身
響く笑い声は
私の真の世界を蝕んでいく

恐怖をおぼえた私は
私をも壊していく

本当の私は
どんな風に散ってくれるのかしら
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