閉店間際/三州生桑
 
言はない。
店内の明かりが落ち始めた。野菜売り場から奇声が上がる。青年が床にしゃがみ込んでゐる。胡瓜を小刀に見立てて、切腹の真似事をしてゐるのだった。その背後で店長が牛蒡を大上段に振りかぶってゐる。

私は駆け出す。目をつぶったままの店員が追ひ駆けてくる。
あともう少しで出口と言ふところで彼女に押し倒され、その怪力で私は床にねぢ伏せられる。彼女はおもむろに内ポケットからコンドームを取り出した。




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