ちたま/山中 烏流
 
 
 
 
 
 
 
小指の先くらいの
小さな虫が
ほんの僅かなひかりで
戯れる頃
 
私も
肉眼で見たとして、
あなたの瞳くらいの
月を
眺めることでしょう
 
 
優しそうな夜風は
あなたの口調を真似て
私の左側の頬を
通り過ぎて行きます
 
コンクリートから
青々としたみどりが
のっそりと
はい出ていることには
この際
目を、つむりましょう
 
 
さっき
すれ違ったばかりのひとと
また
すれ違うことに
意味はありますか
 
あなたの瞳に
よく、似ている
まんまるで
何も映らない球に
夢を覚えることの意味は
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