侍/服部 剛
ある友は
繰り返し押し寄せる
夜の暗闇に闘い疲れ果て
自らの命を絶った
ある友は
不条理な世の濁流に流され
無情な職場から
解雇通告を受けた
ある友は
老いた父の病で腐り
切り落とされた片足を
呆然と眺めた
ある友は
息子が交差点で車に跳ねられ
術後を待つ冷たい廊下で
両手を組み合わせ一心に祈った
時に誰もの心に
姿を現す
廃墟の街の暗闇に
明日も炎の陽は昇る
戦無き時代の侍は
全ての友の面影を胸に納め
夜明け前の廃墟の街に
独り立ち
鞘(さや)から光の剣を抜く
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