夜。笑い。にて。/なかがわひろか
あははと踵の硬く白くなったところを爪でぐいぐい押しながらこらえきれなくなった笑いを爆発させる。ここ、ここ、ここ、ここ床一面に広がった牛乳を指差して必死に叫ぶ。その上をつーっとフィギュアの選手気取りで滑り始める男の年は47歳。男が滑った跡から床の茶色と白が交互に現れて、そこが元は床だったことを思い出す。誰も布巾を取って来いと言わない。誰も誰かに命令をしたことがなかったから。自分から布巾を取りに行ってもいいのかよく分からない顔で周りを見渡す。どんなタイミングで布巾を取って床を拭けばいいのかが誰も分からない。仮に自分が床を拭くとならば、気持ち悪くポーズを決めている男を退けて、男がそこら辺を歩き回ってまた
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