にがり飴/薄紅
 
仕事で忙しい同僚が
おやつ変わりにって
飴をひとつくれた

「最近流行ってる。にがりが入ったの。」

「ありがとう。」

その小さな袋を
ぴりりと
やぶく

透明色の四角い物体

無機質な蛍光灯に
かざしたら
仕事をしていた上司が
変な顔

慌てて口に放り込む

口の中で飴を転がしながら
仕事を再開した

しょっぱいと思ったら甘かった
甘かったけどちょっと…しょっぱい

同僚はまた
仕事を取りに
でかけていった

何だかわからないまま
時だけが過ぎる

あの人も
この人も
どこにいったんだろう?

海からやってきた
いろんなものが
いずれまた
かえっていく

何もしないよりはいいわよね?
何も知らないよりはいいわよね?

そんな風に納得して
日々が過ぎてしまっても
それはそれでいいのかも

ちょっとだけえらい人に
なった気分で
仕事を続ける

透明で小さな海も
いつのまにか



消えていた


戻る   Point(2)