海面上昇3/rabbitfighter
 
戒厳令下、部屋は灯火管制の暗闇に沈んでいる
遠く、山脈の向こうで、モデムのLEDが点滅している
僕は、銃撃に怯えながら
アロマキャンドルの揺れる炎を見つめている

嘘ではない。もはや戦後ではないのだとすれば、
それを戦前と呼べばいい
血塗られていない歴史なんてどこにもないんだ
世界が等しく暗闇に沈むと
遠くの銃火をぼんやりと見ることが出来る
この闇の中で、人が人を殺し、夜が明けるまで後悔する事も出来ない

行く当ての無い熱が氷河を融かす
上昇する海面に圧されて人は武器を手に取る
全ての銃弾に正義と刻んで
より強い正義がそのほかの正義を圧倒していく。
結局、海面からは逃れられないのにね。
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