一脚の椅子/ダーザイン
 
孤独な旅に早くもくたびれて
テントの中で アパートの椅子を思う
食卓に一脚の椅子

雨に煙った三日間
バイク乗りは手を差し伸べあうが
届ける花束はない

明日はもっと 寂しい所へ行こう
誰もいない海岸草原
海の最中にとり残された
一本のか細い道へ

朽ち果てた木道の脇で
風露草の桃色が
霧雨とともに吹き過ぎて行く風に
身をふるわせているだろうか

或いはジャズバー釧路 ブルース・アンドロック帯広
そのような辺土の部屋のカウンターには
どのような娘が立っているのか

誰もいない晩夏の浜辺に
置き忘れられた一脚の椅子

そのようにして終える旅もある

夜半
喧騒の名残るキャンプサイトを抜け出し
湖畔へとたどる

遠く対岸の岸辺で
単眼のヘッドライトがひとつ
夜を引き裂いていった

#古い詩です
戻る   Point(8)