一脚の椅子/ダーザイン
孤独な旅に早くもくたびれて
テントの中で アパートの椅子を思う
食卓に一脚の椅子
雨に煙った三日間
バイク乗りは手を差し伸べあうが
届ける花束はない
明日はもっと 寂しい所へ行こう
誰もいない海岸草原
海の最中にとり残された
一本のか細い道へ
朽ち果てた木道の脇で
風露草の桃色が
霧雨とともに吹き過ぎて行く風に
身をふるわせているだろうか
或いはジャズバー釧路 ブルース・アンドロック帯広
そのような辺土の部屋のカウンターには
どのような娘が立っているのか
誰もいない晩夏の浜辺に
置き忘れられた一脚の椅子
そのようにして終える旅もある
夜半
喧騒の名残るキャンプサイトを抜け出し
湖畔へとたどる
遠く対岸の岸辺で
単眼のヘッドライトがひとつ
夜を引き裂いていった
#古い詩です
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