詩人のシノギ(新体詩抄の巻)/みつべえ
された。維新以後の急激な西洋化の波のなかで誕生した近代詩の、ひいては現代詩につながる日本の自由詩の嚆矢とされていて、明治の詩史は必ずといっていいほど、この本からはじめられる。もちろん、それに先行した新時代の作品群も当然のようにあった。たとえば賛美歌の訳詞や小学校唱歌の詞等。それなのに、なぜ「新体詩抄」が嚆矢とされているのかといえば、ひとえにその序文のマニフェストによるところが大きい。すなわち明治のうたは明治の日本語でうたうこと、新しい時代の意識を日常の言葉で表現することを宣言したものだったからで、ちょっと先に言った者勝ちという感じはある。訳詩14篇、創作詩5篇という構成で、どちらかというと英米の詩
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)