逆兎/あすくれかおす
 
投げやりな雨の中でも 
朝は朝としての時間を果たしてゆく
ふたつの手足 唇の動きを確かめて
私も私としての時間を果たそう
魔法使いのおばあさんが昨夜私にこう言った
「かつて私は魔法に焦がれ
 魔法を信じ
 そして それは現実という名前に形を変えた
 私は魔法を思い
 それから先も思い続けるつもりだったが
 やがて 
 自分の中にある魔法が
 どういう訳か気恥ずかしくなり
 そのうちに遠ざけて
 とうとう唱えることをやめてしまった」
私にはおばあさんの悲しみが少し分かるような気がした
私にはたくさんの心残りが
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